
阿刀 明美
AKEMI ATO / 29ひとりになりたくて、歩きはじめた。
元・管理栄養士。考えごとが多く、少し偏屈。仕事と日常に疲れ、徳島から歩き遍路をはじめる。
A NOVEL IN THREE PARTS 四国、ある旅のつづき。
一人にさせてもらえないから、
孤独が少しほしかった。
歩くこと、考えること、
誰かといること。
仕事を辞めた。もうすぐ三十歳になる。
「ここにいてはいけない」——
そう思った明美は、四国へ向かった。
ひとりで歩くはずだった。
けれど、よく食べ、よく喋るマオが、
いつのまにか隣を歩いている。
うどんを食べる。道を間違える。考えすぎる。
そんな旅の先にも、暮らしは続いていく。
街が変わり、人が歳を重ねても。

ひとりでいたい日も。
誰かがいてほしい日も。

ひとりになりたくて、歩きはじめた。
元・管理栄養士。考えごとが多く、少し偏屈。仕事と日常に疲れ、徳島から歩き遍路をはじめる。

いつのまにか、隣にいる。
よく食べ、よく喋る「歩くラジオ」。明美を「お姉」と呼び、旅の静けさを軽やかにかき回す。
「ほな、いこか」
第一部『shiasatte』よりドラッグでも、くるり。
旅から暮らしへ。
そして、幾十年の時間へ。
第一部
歩く。話す。ひとりのつもりが、ふたりになる。
第二部
旅のあとにも、暮らしは続いていく。
変わっていく関係と、そこにいる人たち。
第三部
街も、人も変わる。
その時間に、誰かを思う。
立冬間近の十一月、この物語の主人公・阿刀明美は、リムジンバスの中にいた。リムジンといっても奮発したからではない。四国は徳島、空港から、
「駅に行きたい」
といえば、乗せられた。
年齢、二十九歳。あと数日で三十路になる。